一時しのぎ

医学的な治療は「病気の根本(原因)をなおす治療」と「症状を一時的に軽くする治療(対症療法)」とに大別されると思います。後者は「一時しのぎ」と言ってもいいかもしれません。
高熱のある子どもがアセトアミノフェン(カロナール)を内服する。便秘症の子どもがポリエチレングリコール(モビコール)を内服する。ADHDの子どもがメチルフェニデート(コンサータ)を内服する。いずれも「一時しのぎ」に相当します。
「一時しのぎ」、大いに結構ではないかと私は思います。「しのぐ」ことができずに大きな破綻をきたすのを回避する意味は決して軽んじることはできません。高熱が続いて水分が摂れずに重度脱水になる、直腸に便が固まってしまって泣きながら摘便されることになる、落ち着きがないと注意叱責されるばかりで反抗的あるいは抑うつ的になる、となるくらいなら、うまく「一時しのぎ」をしていくことは大切だと私は考えます。
ただし、注意したほうがいいことがあります。まずは、その治療には「一時しのぎ」のための効果がきちんとあり、「逆効果」にはならず、副作用が大きくないかどうかです。例えば、「咳止め」と呼ばれる薬がありますが、皮肉なことに、咳は止まりません。一部の感染性胃腸炎は、腸管の蠕動を抑えるような強い「下痢止め」を使用したら、むしろ重症化します。
また、「一時しのぎ」であることを十分に認識し、その「一時しのぎ」をしている間に何をするかが重要だと心得ることが大切です。解熱剤を使うのは十分に休養させるためで、登園させるためではありません。便が硬くならないような内服をしつつ、「排便は痛いことではない、我慢せずにすると気持ちがいいものだ」「一日のなかで時間を決めて排便するとスムーズに出やすい」ということを子どもに教えていきます。衝動性の高さのために「ついつい失敗してしまう」ことが多かった子どもが内服をすることでほんの少し立ち止まるようになったら、その瞬間を見逃さずに誉めてほしいと思います。
子どもの「病気」のかなりの部分は、「病気の根本(原因)をなおす治療」をしなくても、子ども自身の力でよくなっていきます。逆に、子ども自身の力でしかよくならない、そのための時間はどうしてもかかる、ということでもあります。子どもの高熱はその多くがウイルス感染で、子ども自身の免疫力で治ります。便秘症も、直腸に便が貯留したことを便意として適切に感じる働きが育ち、排便する習慣がつくと改善していきます。衝動性の高さによる失敗は小学校高学年以降は少しずつ減りますし、工夫したり相談したりの力もついていきます。「一時しのぎ」をしている間の大人の心構えとしては、子ども自身の力を信じて見守り、「こじらせる」ことになっていないかを観察し、「私は大丈夫」と子どもが安心できるようにすることだとに思います。
