奈良
2026年8月10日

それまで奈良には、中学の修学旅行で大仏を見て鹿に餌やりをした記憶しかありませんでした。大人になってから京都を再訪してみるとやはり随分と違った印象がありましたから、死ぬ前に奈良にも是非もう一度という気持ちがあり、「日出処の天子」を最初から最後まで読み直したうえで、ゴールデンウイークに旅行の計画をしたのでした。
大学時代に夢中になって読んだその漫画の主人公である厩戸王子(聖徳太子)や(蘇我)蝦夷が実際に生きていた跡の残る明日香や斑鳩を巡ることは、それだけで心が浮き立つものだったのですが、奈良県全体で最も印象的だったのは「家並みの美しさ」でした。観光地以外でも家々の屋根がほぼ銀灰色の瓦に統一されていて風景に溶け込んでいますし、びっくりするほど立派な門構えの日本家屋があちこちにありました。実際に生活するとまた違うことはあるのだと思いますが、受け継いできたものを大切にして風土との調和を失わないことは本当に美しいと感じました。
素朴だけれど「え?これって、こんなに美味しかったの?」という味覚にも巡り合いました。「くず餅」「よもぎ餅」「奈良漬」です。気候や土壌がいいのか、野菜がしみじみと美味しい土地だということもわかりました。行き交う人の表情や口調も穏やかでのんびりしているように感じ、一気にこの県のファンになりました。今回訪れることのできなかったところ、特に、土門拳が「古寺巡礼」で撮影した室生寺には、いつか行く機会を作りたいと思います。
