アントワーヌ

周参見、和歌山県

フランス人作家マルタン・デュ・ガールの代表作である「チボー家の人々」を読んでいます。文庫にして13巻ある長編で、私は今ようやく3巻が終わるところです。

イタリアには「マラヴォリア家の人々」(ジョヴァンニ・ヴェルガ)、ドイツには「ブッデンブローグ家の人々」(トーマス・マン)という小説があり、いずれもその国を代表する作家によって書かれた作品です。複数の世代にまたがる個性の異なった人物が登場し、入り組んだ関係を織りなしていくこのようなタイプの小説を私は好んで読みます。中上健次の熊野を舞台とした作品群もそうですし、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」もそうであるかもしれません。

個性の異なる人物たちが登場するとき、そのうちの一人に、自分自身との共通点を多く見つけることがあります。「カラマーゾフの兄弟」では次男イワンでしたが、「チボー家の人々」では長男のアントワーヌがそうであるようです。アントワーヌは母を幼いときに亡くし、厳格な父がすべてを決定するような家庭で育ちます。元気のよいタイプの弟と比べて勉強のできるタイプの彼は父のお気に入り(自慢)ですが、そのことでかえって、父に対して「反発したいけれどそれをしきれない」というようになって、余計に反発の度合いを強めます。そして、そのアントワーヌは小児科医となります。

身体的特徴へのコンプレックスもこのように書かれています。「彼は、鏡に向かうとき、肩を張り、あごを引きしめ、いつも真正面から、鋭い眼差しでじっとわが目を見つめるくせをもっていた。彼は、自分のあまりに長すぎる胴体、あまりに短すぎる足、細い腕、そして、貧相とさえ言えそうなからだの上に、あまりにもがっちりした頭、ひげのあることによてさらにどっしりしたものに見える頭のついている不調和を忘れたく思っていた。」

自分と違うところもありますが、共通点がここまで多いと感情移入もしてきます。弟や父との関係など、どのように物語が展開されていくのか、楽しみながら読み進めています。

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