インフルエンザ予防接種
10月中旬からインフルエンザの予防接種を開始します。詳細はHPをご確認ください。
小児に対する接種の最も重要な目的はインフルエンザ脳症の発症予防だと私は思っています。小さな変異を繰り返していく呼吸器系のウイルスが鼻や喉の粘膜で増殖して発症する感染症に対して、皮下組織や筋肉に注射するタイプの予防接種が感染や発症を予防する効果が果たしてあるのか、この数年かなり議論されました(今もその議論は続いていると私は考えています)。一方で、ウイルスが鼻や喉の粘膜で増殖することそのものではなく、ウイルスに対して全身の免疫系が過剰に反応してしまうことで発症すると考えられる疾患、その代表例であるインフルエンザ脳症に対しては、インフルエンザワクチンははっきり予防効果があると私は考えます。
予防接種一般にリスクはゼロではありませんが、これまで長い年月使用されてきて中長期の安全性も十分に高いと考えてよいワクチンであり、インフルエンザ脳症の発症リスクが相対的にやや高いと考えられるお子さん(生後6か月~6歳の乳幼児、7歳以上であっても熱性けいれんを起こしたことがあったり家族に熱性けいれんの人がいる小学生)において接種のメリットはデメリットをはっきり上回ると思います。任意接種であるため金銭的負担が発生することになりますが、ぜひ検討してみてください。
一方で、接種しないという判断も十分に尊重されるべきだと考えます。インフルエンザに罹患してもインフルエンザ脳症とはならないことの方がずっと多いのですから、高くはないリスク(インフルエンザ脳症となるリスク)は引き受けて生きていくという価値観も当然ありえます。接種をしていてもしていなくても、この冬にインフルエンザに罹患したお子さんに対して、私たちはできるかぎりの診療を分け隔てなく行なっていきます。また、接種をしないという判断を尊重されるべきなのは大人だけではなく子どもも同じだと考えます。知的能力が年齢標準と考えられる小学生以上のお子さんで、接種がどうしても嫌で、本人を大人が抑えていないと接種ができない(一人で座って接種ができない)場合には当院では接種を行なわないことをあらかじめお伝えしておきます。お子さん本人が接種を嫌がったために接種をしなくて、この冬にインフルエンザに罹患してしまったとしても、接種をしていたのに罹患してしまった場合と同様に、保護者の方はお子さんをいたわり、介護をしていただきたいと思います。