押すか引くか

夜の大運河(Canal Grande), ヴェネツィア

インフルエンザの検査を受けるかどうか小学生本人に選んでもらうことの話の続きです。

良くある状況として、症状が典型的なインフルエンザで、周囲に明らかな流行があり、高熱の原因が診察で他には見当たらないとき、「検査を省略してインフルエンザと診断し治療できる」と伝えたうえで「検査で確認しておきたいか?」と本人に尋ねます。また、検査を省略した診断ができない状況のとき、「普通の風邪よりインフルエンザの経過は長引くけれど検査をして診断がついて治療薬を使うと経過は少し短くなる。でも自然にも治るものだから検査をせず特別な治療をしないで治るのを待つというやり方もある」と伝えたうえで「先生はお医者さんだから、どちらかというと検査することを勧めるけれど、どうしても嫌なら検査しないのもありだと思う。どうする?」と本人に尋ねます。ただしこの後者の問いかけは小学校低学年では難しく、「どうしても嫌なら検査しなくてもいい」という最後の部分しか伝わらないことも多いと感じます。

子どもが親御さんの期待に反して「嫌だ、検査しない」と答えることは少なくありません。そのようなとき親御さんがどうしても検査を受けて欲しいのであれば、「検査してみたら?」「検査したほうがいいんじゃない?」「検査しなさい」「検査したら~してあげるよ」「検査して欲しい」など様々な働きかけがありえると思います。そのときの子どもの様子を見て、各々の親子関係に蓄積された経験から、取り敢えず何かしら働きかけてみるしかないでしょう。

重要なのは、それでも子どもが嫌がったときの対応だと思います。「あ、かなりはっきり嫌がっているな」と気付いていただいて、「更に押す」か「引く」かを決めるときです。「引く」のであればこのタイミングしかないと思ったほうが良く、更にいろいろした後に最終的に「じゃあいいよ」ということになるのはできるだけ避けたいところです(最終的に子どもの意思がかなったことになりますが、気持ちよく自主性が尊重された(親御さんの側からみると「気持ちよく自主性を尊重した」)という記憶として残らないと思います)。「更に押す」のであれば「検査して欲しい」をお勧めします。以前に書いたことのある「アイ・メッセージ」の一つで、強制の度合いが格段に少なくなり、頑なだった子どもの気持ちが少し緩むかもしれません。なぜ検査を受けて欲しいのか親御さんの切実な気持ちを正直に真剣に伝えて、それでもダメだったら仕方がないのではないか、私はそう思います。

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