小さな村の物語

チンクエ・テッレ(Cinque Terre), リグーリア州

週末にBS日テレで放送されている「小さな村の物語 イタリア」が好きです。毎回60分の放送で1つの村を取り上げ、そこに暮らす2人の村人の人生(物語)が語られる、それだけの番組です。

北から南まで、山間であったり海沿いであったりしますが、取り上げられるのはいずれも自然に囲まれたとても小さな村です。老若男女、経歴や職業も様々な人が登場してそれぞれ自分の家族や村について語ります。紹介される幼少期のエピソードに独特なところがあり、現代の日本なら小児科で「診断」をされたかもしれない人もしばしばいます。番組の中でたいてい食事の場面が出てきますが、飾らない家庭料理であっても決まって美味しそうです。有名な観光都市を幾つも抱え、ステレオタイプな国民像というものがあり、世界中でその料理が食されるイタリアですが、違った一面を垣間見ることができると思います。

番組のホームページによると15年以上続く番組で、これまで400回以上の放映を重ねているようです。放映開始初期にリグーリア州のアプリカーレ(Apricale)を取り上げたことがあったようで、この村はイタリア留学時代に訪れたことがあり、よく覚えています。ジェノヴァから電車とバスで日帰り旅行のつもりだったのに、予想もしていなかった早い時間に最終バスが出てしまって、一泊することになってしまいました。同僚に「明日仕事に行けなくなった」と電話すると「アプリカーレじゃあ仕方ないね。でも、美しいけれどとても辺鄙なその村までよく行ったね。Grande, Yuji !!(すごいね!)」と励まされました。

自然があって、食べ物が美味しくて、多様な経歴の人生が可能で、人が暮らす環境としてこれ以上のものは必要ない(そして、あるレベル以上の医療というものも恐らく必要ない)のではないかと思うのです。もちろんこれは意図をもって切り取られた番組であって、イタリアのすべてがこうではないこと(特に田舎では若者の仕事が安定しないこと)も知っています。日本にも、自然があって、食べ物が美味しくて、多様な経歴の人生が可能な、そんな環境というものがどこかにあって、私がそれを知らないだけなのかもしれません。いずれにしても、大多数の子どもが歩む道(経歴)を自分の子どもが踏み外すのではないかとどうしても怖くなってしまう私たち大人が、人は本来「多様な経歴の人生(物語)」を送ることが可能なのかもしれない、あるいは送るべきなのかもしれないと思える60分は貴重だと思います。

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