母子手帳

マテーラ(Matera), バジリカータ州

ここに51年前に発行された母子手帳があります。紙は黄ばみ、大小の染みがそこかしこに付いています。

第2子だったこともあり分娩の経過が早く、15時に陣痛が来て18時に出生したようです。生後6か月で体重8㎏と平均だったのが生後12か月では8.4kgと増えが少なく、痩せている体と比べて相対的に頭が大きかったためか、1歳健診の記載には「栄養発育不良」「脳水腫の疑い」とあります。このように判断した小児科医がどうしたのか、ただそのように伝えただけだったのか、現代のように栄養指導をしたり精査のために紹介状を書いたりしたのか、わかりません。「小さいときに”水頭症の疑い”と言われて心配した」と聞かされたことはあります。

予防接種の欄にはBCG接種の記録が無く、3種混合ワクチンは(通常4回のところ)3回、日本脳炎ワクチンは(通常3回のところ)1回までしか接種した記録がありませんでした。4歳のときだけインフルエンザワクチンを接種したようなのですが、2回する接種の間隔が(現在では2-4週間のところ)1週間でした。大らかな時代だったのだと思います。4歳時に風疹、水痘、麻疹に罹患したと書かれていました。当時の日本ではこれらの予防接種の接種率がとても低かったのです。3歳時に「気管支炎から感冒性消化不良で昭和病院に4日間入院」とありました。食が細く痩せていて、すぐに嘔吐する子どもだったようです。

私たちが保護者として、あるいは医療従事者として記載する母子手帳を、もう私たちがこの世にいなくなった後で、成人した子どもたちが読むことがあるだろうと思います。自分たちが子育てをする身になっているであろう彼らは、その頃には時代遅れになっていることや不完全なところをその中に発見するでしょうが、きっと微笑ましく読んでくれるでしょうから、いまの私たちはいまの私たち自身がするべきと感じることを精一杯すればいいのだと思います。

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