イタリア文化私観

カモッリ(Camogli), リグーリア州

坂口安吾はエッセー「日本文化私観」において、日本文化の本質は(しばしば外国人に褒めそやされるような)伝統を体現した作品にあるのではなく、(伝統とは無縁で俗悪に見えるとしても)その時代を生きる日本人そのものやその生活、その中で生み出される実質的な作品にある、というようなことを書きました。同様に、イタリア文化を理解しようとすれば、ルネッサンス絵画やオペラではなく、現代に生きるイタリア人そのものやその生活を理解する必要があると私は思います。

自分たちと違うところが多いので興味を持つ人がいるためなのか、日本ではこれまで「イタリア人」に関する書籍が数多く発売されてきました。日本人が書いたものもあればイタリア人が書いたものもあり、私はこれまで10冊くらいは読んだと思いますが、日本人がイタリア人を理解するために最も役立つと思うのは「最後はなぜかうまくいくイタリア人 (日経ビジネス人文庫) 」です。いまSNSで話題になって売れているようですが、私はイタリアから日本に戻ってきて読み、私の知った「イタリア人」に一番ぴったりくるなと感じました。

しかし、イタリア人とは何かを知るのにはこの動画(https://www.youtube.com/watch?v=Jwan0KgNa5w)で十分かもしれません。サッカーの欧州選手権(2020年)でイタリア代表が勝ち進んでいて、ローマのどこかの広場でパブリックビューイングが行われていて、試合前の国歌演奏が始まったときの若者たちの様子です。明るさ、優美さ、飾らない単純さ、そして情熱。眉をひそめる人も一部いるかもしれませんが「これぞイタリアだよ」と言うイタリア人は多いのではないかと思います。

余談ですが、この動画を見ると別の感慨も湧いてきます。15年前には自分もこういった若者たちの中にいたのだと。

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