頭越しに話さない

コゼンツァ(Cosenza), カラブリア州

自分の向けた視線が見つめ返されることなく、自分の声や動作に反応が返ってくることもなく、自分の前で親が大人どうしだけで喋っているような状況(親がスマホを見ている状況もそれに近いです)が常にあったら、0歳~1歳の子どもの対人意識は高まらないのではないかと思います。幼児期や学童期などそれ以降の年齢でも、自分の頭越しに、あたかも自分がそこに居ないかのように他人どうしが会話している状況が常にあったらどうでしょう?特に、自分の頭越しに行なわれる会話が自分についてのことなのに自分の存在が無視されていることが常であったなら、「自分は自分のことを自分で決めたり選択したりできる存在である」という人生に対するポジティブな気持ちが育たなかったり損なわれたりするのではないかと思います。

理由もよくわからずクリニックに連れてこられる、診察室に入ると親と医師が自分のこと(症状)について話している、身体の診察のときだけ声がかかってシャツを上げるように言われたり口を開けるように言われたりする、診察が終わると自分の出番は終わりで再び親と医師が話しをしている、診察室を出るときだけ医師が「バイバイ」と言うのでそれには何となく返したほうが良さそうなので「バイバイ」と返す、家に帰ってからは飲むように言われた薬を飲む。

小児科診療のこういったところ、子どもの頭越しに話すのが当たり前になっているところを何とか変えていきたい気持ちがあります。問診であったり説明であったり親御さんと話をすることが多くなることはどうしても避けられないですが、その合間に子どもから視線が向けられたら見つめ返したいと思います。「こんにちは」「お熱が出ちゃったんだね」「(シャツをあげてくれて)ありがとう」「(きれいな胸の音をしていて)大丈夫そうだよ」「これからだんだん良くなるよ」などの言葉を子どもの目をみて発する、あなたのことについてあなたの存在を無視して決めることはしませんよという気持ちを態度で伝える、そのような診療にできないか試行錯誤しているところです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です