ロベルト(Roberto)

デ・フェラーリ広場(Piazza De Ferrari), ジェノヴァ

私の留学した小児病院の小児神経精神科には研修医含めて医師が20人くらいいましたが、研修医のEnzoと准教授のRobertoを除いてみな女性でした。男性同士ということもあったのか、面倒見の良さをからか、Robertoが指導医を引き受けてくれ、2年間私は彼の弟子として過ごしました。

毎朝「Buon giorno, Dottore(おはようございます、先生)!」と准教授室に入っていきます。「Buon giorno,Yuji! 元気か?」に続いて「コーヒー行こうか?」ということになって連れ立って院内のバール(喫茶店)でエスプレッソを飲みます。医療のことだけでなく政治や歴史などいろいろな雑談をしました。1時間半くらい外来の診察をするとまた「コーヒー行こうか?」ということになって再びバールに行きます。戻ってきて1時間くらい外来の診察をし、入院中の患者さんの回診をして投薬の指示を出すと、お昼前にはRobertoの仕事は終わります。「じゃ、今日はこの辺で逃げ出すとするか!」

小児神経精神科のなかでも「てんかん」の分野が専門で、一見すると風采の上がらない定年間近のお爺ちゃんなのですが、重要なポイントをつかむ感覚の鋭さと決断の早さには目を見張るものがありました。クリスマス1週間前のちょうどこの時期に、南イタリアの辺境の地域から「てんかん」の専門的な治療のために入院している子どもがいました。回診のときに家族から「先生、私たち南イタリアの田舎の人間にとってクリスマスに家族が集まるのはとても大切なことなんです。何とか退院できないでしょうか?」と懇願されました。もう少し入院で治療を継続するかどうか判断が難しい(慎重を期すなら入院継続が必要な)状況だったのですが、Robertoは一切のためらいなく「わかりました。お子さんの具合からしても大丈夫ですよ!お宅の地元の〇〇先生に引き継ぎの手紙を書きますね」と答えたのでした。格好良かったなぁ。

イタリアで高齢者がCOVID-19のために重篤となる人が多かった時期に心配でメールをしたら、お元気なようでした。「てんかん」の患者さんがいると誰もがあなたに意見を求めるので、脳神経外科の病棟や救急外来にもよく呼ばれていましたよね。そういうときをはじめ、それこそ病院中どこにでも私はあなたの後を付いて行ったので、「今回はトイレだよ」と笑いながら仰られたときが何回かありましたね。その節は失礼しました!

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