小児神経科か児童精神科か

カステッラーナ洞窟(Le Grotte di Castellana), プーリア州

子どもの神経発達症(発達障害)の診療は日本では小児神経科(小児科の一部)あるいは児童精神科(精神科の一部)で主に行なわれています。どちらの科に受診したらいいのか、私の個人的な意見です。

小児神経科に受診したほうがいいと考えられるのは以下のいずれかに該当する場合だと思います。①運動(歩く、走る)の発達にもはっきりとした遅れや心配がある②てんかん(けいれん、意識減損を反復する)がある③退行(以前できていたことができなくなる)がある④言葉による意思疎通が難しい⑤身体の症状(頭痛、腹痛)が頻繁にある⑥一般診療で通院しているかかりつけの小児科医に小児神経科の基礎的な素養があり発達面での相談にも乗ってくれる。

これらに該当しない場合には、もし受診できるのなら、児童精神科に受診したほうがいいと私は思います。私含めた小児科医は受診の主体であるべき子ども本人ではなく親御さんと話をしてしまう傾向にあり、特に子ども本人との言葉によるやりとりが診療において重要になってくる小学校高学年以上の診療は、児童精神科の医師が数段上手なように思います。また、小児科は「子ども」、精神科は「精神疾患の患者さん」、という社会的な自由や権利を奪われやすい存在を診療していますが、小児科は子どもの自由や権利を守ろうとするときにどうしても「親御さんを介して」という態度が染み付いてしまっていて、十分な判断ができない患者さんの自由や権利を他の誰でもなく本人自身の自由や権利としてどこまで(如何にして)尊重することが可能かという点について考えてきた歴史が精神科と比べて浅く、今も決して十分でない気がします。

小児神経科に受診したほうがいいと考えられる6つの状況のうち①~⑤は開業医だけで診療することは困難で、大きな病院(地域中核病院、専門病院、大学病院)の小児科での検査や治療がしばしば必要になります。小児科の開業医として私が携わりたいのは主に小学校低学年くらいまでの年少の子どもを対象とした⑥で、発達診療を「子どもが安心して生活できる環境を整えることで心の健康を保つために知恵を出し合う診療」と位置付ければ、それまでに築いた子どもや親御さんとの関係を活かせますし、小児科医として染み付いた診療態度の延長でも役に立てることがあるのかなと思っています。

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