VAR
サッカーの欧州選手権がスペインの優勝で幕を閉じました。4年前に優勝したイタリアは今回ベスト16で敗退しましたが、世界的なレベルの選手がほぼ見当たらず、妥当な結果だったと思います。残念なのは、イタリア代表の男前レベルが格段に下がっていることです。かつては試合前の国歌斉唱のときなど惚れ惚れするほどの美男子揃いだった(Maldini, Nesta, Inzaghi, Totti, ….)のが今回はまるで….。
ここ最近のサッカーの大きな大会ではゴールやオフサイド、ペナルティキックの判定にVAR(ヴィデオ・アシスタント・レフェリー)が用いられるようになりました。微妙なプレイが「正確に」判定されるようになりましたが、一方で、試合がしばしば中断するようになりました。誤審とそれにまつわる悲喜こもごも含めて人間的な営みとしてあった庶民のスポーツであるサッカーが、大金が動く以上は間違いが許されないビジネスになってしまった時代の変化を感じさせます。
医療において医師が行なっている役割(診療)が、コンピューターや人工知能にとって代わられる日も遠くないかもしれません。診療というものは、蓄積された過去の経験やデータから得られる法則を目の前の患者さんに適応することを基本としているので、コンピューターや人工知能はそのことをより「正確に」行なうでしょう。誤診とそれにまつわる悲喜こもごも含めて人間的な営みとしてあった医療はいずれ時代遅れになる気がします。間違いを許さない現代の社会はそれを望むでしょう。
子どもが40℃の発熱をしたので親御さんが小児科診療所を受診します。この診療所で稼働する人工知能は99%の確率で正しい診断をするそうで、そこでは「90%の確率で風邪でしょう」との回答でした。残りの10%の確率が心配になった親御さんは、99.9%の確率で正しい診断をするという新型の人工知能を供えた総合病院を受診しましたが、そこでは「99%の確率で風邪でしょう」とのことでした。けれど残りの1%がますます不安になった親御さんは、まだ研究段階ではあるものの99.99%の確率で正しい診断をするという人工知能があるという大学病院に駆け込みます。受付をしていた看護師が慌てて駆け寄ってきます「お子さん、かなりぐったりして、顔色が悪いですよ」。炎天下を連れまわったために脱水状態となり入院することになりました。
近未来を予想して書いていたら、手塚治虫の漫画にありそうな展開になりました。手塚治虫がそうだったように私も、「科学技術は人間が賢く使いこなせば大丈夫」とは思えず、未来について悲観的です。結局はその時代その時代の人間が考え、判断していくしかないのだと思います。