理解と納得

オルヴィエート(Orvieto), ウンブリア州

発達診療において大切しているのは、子どもの特徴(そして、その特徴を生かしながら無理なく生活しやすくするための工夫)について親御さんや先生など周囲の大人が理解し納得できるよう説明することです。

注意欠如多動症(ADHD)の子どもは「頭に浮かんだことをいったん立ち止まって考えるよりもすぐに行動に移すことが自然で、視点を固定するのではなく転々と移動させながら世界を認識していくことが自然な子どもです」と説明します。

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは「他者の視点で物事を見たり他者の動機で行動したりするのではなく自分の視点で物事を見て自分の動機で行動することが自然で、いま目の前にはっきり見えていることや既によくわかっていること、自分にぴったりくる感覚をもとに行動することが自然な子どもです」と説明します。

これらは脳機能の特徴に基づくもので、「他の多くの子どもがすることをしなかったり他の多くの子どもがしないことをする」「他の多くの子どもに適したやり方が通じにくい」「他の多くの子どもに適した集団や社会のなかで自然体でいることが難しくなるため自己への不全感や周囲への不信感を募らせ二次的な心の問題を生じやすい」ものの、「治すべきもの」でも「治るもの」でも「病気」ではなく、その特徴はそのままであることを前提に、その特徴を生かしながら、無理なく生活していくための工夫について一緒に考えていきましょう、と伝えます。

このように説明したとき、多くの親御さんが「子どもの特徴を理解し納得できた」と仰っられるように思います。「工夫」も大事ですが、それに先立つ「理解と納得」があってこそ「工夫」が単なる「他の多くの子どもと同じことをさせるためのテクニック」「子どもを大人の思い通りに動かすためのテクニック」にならずに済むのではないかと考えています。

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