後発医薬品
10月1日に制度改正があり、後発医薬品ではなく先発医薬品を患者さんが希望する場合は後発医薬品と先発医薬品の薬価の差額の一部を患者さんが自己負担することになります。膨張を続ける医療費の削減にはこの程度では焼け石に水かもしれませんが、方向性として私は歓迎したいと思っていて、差額の一部ではなく全額を自己負担でもいいとすら思っています。
後発医薬品と先発医薬品が全く同じだと考えている訳ではありません。主成分は同じでも、それがどのように薬剤化されているか(内服薬であればどのようにコーティングがされているか、外用薬であればどのような基剤が用いられているか)によって働きは厳密に同じではないと思いますが、それが実際に使用した場合にはっきりした効果の差になることは極めて少ないと思います。その極めて少ない例の1つが「てんかん」の治療に用いられる「抗てんかん薬」で、たとえ主成分が同じであっても、内服してから胃腸で吸収されて脳に届くまでの動態に差があると効果が変わってきてしまって、そのことによって激しく転倒するなど生命に関るような発作が起こってしまう可能性があります。そのため「てんかん」の診療に携わる医師の専門学会は「抗てんかん薬は先発医薬品を用いるべき」という声明を出していて、今度の制度改正によっても処方する医師が処方箋に「医療上必要」とチェックを入れれば、患者さんは差額を自己負担をせずに済むことになっています。
問題は、「抗てんかん薬」のように学会がきちんと声明を出している訳でもないのに、医師の裁量により「医療上必要」と付けることが可能であるため、これが節操なく乱発されてしまう可能性が高いことです。「何となく効果が高そうな先発医薬品にしたいので”医療上必要”なことにしてください」と頼まれて断れない医師もいると思います。
小児科一般診療で難しい問題は保湿剤の「ヒルドイド」(主成分は”ヘパリン類似物質”)で、後発医薬品と先発医薬品とで基剤(主成分以外のところ)に大きな違いがあるため、効果の差ははっきりあると思っています(前述した「極めて少ない例」の1つです)。ただしこの薬剤は保険診療が本来まかなうべき「乾燥肌を背景にした湿疹(その程度がはっきり強いのがアトピー性皮膚炎です)の治療」を離れて、乾燥肌はあるけれど湿疹がもともとひどくなかったり湿疹はもともとあったけれど最近はかなり長期にわたっていい状態を保っている人(これらの人は”ヘパリン類似物質”の市販薬やその他の市販の保湿剤を購入するのでもいいはずです)にまで外来で処方されています。また、継続的に受診して湿疹の治療を相談している訳ではない小児科に別の理由で受診した際に「ついでに」処方を希望されることがとても多く、私は「あまりにもモラルがなさすぎる」と感じてきました。
「ヒルドイド」の先発医薬品が「医療上必要」とチェックするのは「2歳未満の子ども」「アトピー性皮膚炎と診断されている子ども」「過去6か月以内に湿疹の治療薬(ステロイド外用薬など)を当院で処方されている子ども」に限定しようと考えています。