6-7か月健診

イタリア-スイス国境、アルプスの峰々

発達外来をしていると、1-2歳で言語発達の遅れなどについて相談に連れてこられるお子さんのかなりの割合が一日数時間のテレビ視聴をしています。3-5歳で落ち着きのなさやかんしゃくについて相談に連れてこられるお子さんは少なくない確率で動画視聴をやめられなくなっています。集団会場で行なわれる3歳健診の問診票を見ると、1日あたりのテレビや動画の視聴時間は、少ない子どもで1時間、多くの子どもは2-4時間です。

メディア視聴が子どもの発達に与える深刻な影響についての話をするとほとんどの保護者は「聞いたことがなかった」と仰います。この子どもたちは6-7か月健診あるいは9-10か月健診を受けているはずです。日本においても欧米と同じく小児科学会は「2歳までのメディア視聴はゼロを徹底すべき」としていますが、”お客様”である保護者の耳に痛いことを日本の小児科医は言わないのです。乳児期にメディア視聴についてしっかり指導していれば「幼児の動画依存」や「3歳で2-4時間のテレビ動画視聴」などの悲惨な状況はかなり減らせるはずです。この指導をせずに「顔の上の布を取るか」とか「歯は何本生えたか(口の中の異常はあるか)」とか正直どうでもいいことを話している乳児健診など、何の意味があるのかと私は思っています。

6-7か月健診では「2歳まではメディア視聴ゼロ」に加えて「事故防止について復習しておくこと」を必ずお願いします。また、重大な疾患が無いことを診察で確認して、そのことを保護者に保障したうえで、「まだお座りができない」「体重が増えない」「離乳食を食べない」子どもも「他の子どもと比較すると違うところがあるとはいえ、この子はこのような成長発達をしていくのが自然な健康な子どもなのであるから、焦らず穏やかに見守りながら子どもの要求に丁寧に応じていれば大丈夫」と伝えます。

「他の“一般的な”子どもと比較することで“順調”であるかどうかを判断する」「異常(病気)をみつける」ためだけの健診はもう止めましょう。「子どもはいまどんな段階にあるか、何を必要としているか、何をしてはいけないのか、近い将来にどうなっていくことが予想されるか、どんな準備がいるか」を話し合うのが重要なのだと思います。

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