9-10か月健診

ガリバルディ通り(Via Garibaldi), ジェノヴァ

9-10カ月健診で最も重要だと私が考えているのは「ハイハイをするか」「つかまり立ちをするか」ではなく、診察で「パラシュート反応が出るか」でもなく、「積み木をつかむか」です。ただし、手を上手に使えるかが重要なのではありません。積み木を差し出した私の方にチラッと顔を上げて、「これなあに?つかんでいいの?」と言いたいかのような目でこちらの目を見てくるかどうかです。

このようにこちらを見てくる子どもは「自分と対象物と相手と」という三者の関係性を理解できているということなので、それを更に拡げていく段階にあります。児童精神科医である佐々木正美先生がお書きになった書籍「3歳までの子育てに大切な、たった5つのこと」を紹介し、その中から「一緒に遊ぶ」ということを解説します。ハイハイを始めたこの頃の子どもに対して、見守るばかりではなく親自ら床に降りてハイハイで追いかけたり追いかけられたりをしてみましょう、と伝えます。本の解説には「情緒豊かに他者と交流したり役割を交替したりすることで将来の友達作りの基礎になります」と書かれていますが、それ以外にも、この月齢以降ますます必要となる「親が子ども目線になること」「子育てにおいて親が(言葉だけでなく)身体を使うこと、ときに身体を汚すこと」の始まりになると思っています。

子どもに積み木を差し出しても顔を上げて私の方を見てこないときは、こちらの態勢を子どもの目線よりも更に低くすることで子どもの視界に入るようにして、こちらの目を見ることを確認します。日常生活で親御さんの呼びかけに反応して振り向くかどうかも訊いてみます。これらを通じて「人への注目が弱くなりがちである」タイプの子どもと考えられるときには、6-7か月健診でお話した電子メディア視聴制限について再度確認すると共に、「こちらの態勢を低くして子どもの視線に入るようにして、子どもが人に注意を向けやすいようにすること」を提案します。そして、対人社会面の発達にとってとても大切な時期であることを伝え、「子どもが覚醒しているときはできるだけ子どもの様子に注目し続けて、子どもが人に注意を向けた瞬間を見逃さずそれに応じること(そのためには、家事はできるだけ他の家族に代わってもらったり手を抜いたりすること)」「できるだけ普段の生活を一定にして静かなものにする(子どもが安心しいやすいものにする)こと」などもお願いします。

そのうえで1か月後の子どもの様子を外来で確認するのですが、人への注目が格段に増していることが多く、親御さんも「呼んだとき振り向くようになった」と仰います。これが健診でのアドバイスの成果なのか自然の経過なのかはわかりません。子どもと親御さんがコミュニケーションを取りやすくなった、ただその事実に私は満足します。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です