抗体医薬品

Tizianaと、イタリア小児神経精神学会にて

近年目覚ましい進歩を遂げている治療分野の一つに「抗体医薬品」があります。なかなか有効な治療法の無かった病気のうちの幾つかで、その病気が発症したり増悪したりするうえで鍵となるようなタンパク質を、それにくっつくような抗体を身体に注射することで無力化すると、発症や増悪が阻止できるというものです。その劇的な効果を感じる機会が身近に2例ありました。

まず1例目は人間です。私がイタリアに留学した初日からすぐ友達になり、出身地である南イタリアの太陽のように明るく大らかな笑顔で私を友達グループに引き入れてくれて、彼女がいなかったら私のイタリア留学は全く味気ないものになっていたはずだ、というくらいの恩人が小児神経精神科で当時研修医をしていたTiziana(ティッツィアーナ)です。彼女にはもともと片頭痛があったのですが、私がイタリアを離れた後で出産を契機としてひどくなってしまい、頭痛もその治療薬の副作用もとてもつらいもので、ここ暫くは以前あった弾けるような笑顔がなくなってしまっていました。ところが、この夏に再会した際には以前のように生き生きとしていて、どうしてかと思ったら、片頭痛に対する治療として抗体医薬品を使い始めたら劇的に効果があったのだそうです。「あの治療は私の人生を変えた!」と言っていました。

2例目は犬です。私の飼っている7歳の犬には股関節の変形性関節症があります。診断は4歳の頃ですが、最近は徐々に散歩で走り出すことが減って、後ろ足で立ち上がったり飛び跳ねたりすることも少なくなっていました。そんなとき、変形性関節症の疼痛抑制に効果のある抗体医薬品の存在を知り、その注射を開始してみたところ、数日もすると散歩の際に以前のように活発に走り回り、飛び跳ねるようになりました。後ろ足で立ち上がって人間の食卓の上の肉を漁ろうとするのがまた出てきそうで注意していなければならなくなったのも、嬉しい悲鳴です。

医療の進歩が人間や動物を幸福で自由にするとは限りませんが、すべてを否定する必要は無いのかもしれません。

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