マリソール(Marisol)
2025年3月31日

名前の種類がかなり限られているイタリアで、同じ名前の人を他には知り合うことがなかったくらいにとても珍しい名前なのは、お父さんがイタリア系のチリ人で、スペイン文化の影響があるからなのだと思います。
私が留学したときには小児神経精神科の専攻医2年目で、難しい病気の検査や治療のために入院してくる子どもたちの病棟で研修をしていました。新しい患者さんが入院してくると「Yuji、一緒に診察行かない?」と声を掛けてくれます。たくさんの医師と仕事をしましたが、一緒に診察をした患者さんが最も多かったのは彼女だったと思います。イタリアの医療文化のなかで、医師は患者さん家族にどう自己紹介をして、問診をどのように進めて、どんな風に子どもを診察するのか、傍らに立って見ていました。
共に過ごした週末や旅行の思い出も数えきれないですが、私がイタリアで過ごした2回のクリスマスを家族の食卓に招待してくれたことが何より思い出に残っています。クリスマスだけは(友達同士ではなく)家族だけで過ごすことが絶対のイタリアで、彼女が招いてくれなければ1人で過ごすことになったかもしれない私を迎え入れてくれた彼女とその家族の温かさと寛大さを、私は忘れることはないでしょう。
男女を問わず明るく活発な若者が多いイタリアで、とても前向きではありつつ少し自信の無さや控えめさがあった彼女が友達の輪の中にいて、それでもやはりイタリアならではの朗らかな微笑みをいつも返してくれるという環境でなかったとしたら、私の2年間の留学は随分と違ったものになってしまったのではないかと思います。そんな彼女も今では3人の娘を育てる母親となり、地域の発達支援センターで小児神経精神科医として忙しく働いています。