読み書きの困難
花小金井駅北口徒歩1分、小平市でアレルギーから発達障害まで、医療法人すこやか武蔵野 花小金井駅前こどもクリニックです。子どもの頃に読み書きに少し困難があった男の子の経過について書いてみます。
その子は幼児期に発音の不明瞭さがあり小学校入学前までサ行の発音がタ行になっていました。小学校入学後、国語の勉強は好きでなく、「(物語の)登場人物の気持ちを書きましょう」という問題はどう答えたらいいのかわかりませんでした。物語ではなく図鑑や伝記ばかり読んでいました。中学で英語の勉強が始まると、スペルと発音が一致していないことがとても苦痛でしたが受験のために嫌々勉強しました。
高校時代、萩原朔太郎の詩が好きになり、一文字や一句読点にまで込められた情感を味わいながら暗記するほど繰り返し読むようになりました。この頃、自分が黙読ということができず、小声を出すか口の筋肉を動かしながらでないと本が読めないことに気付きました。時間がかかるので長編小説を読むことができませんでした。
大学に入って第2外国語としてドイツ語を学習し始めるとスペルと発音が一致しているためにとても学びやすく、語学の学習が好きになりました。自由な時間が比較的多かったため、ついにドストエフスキーを読むことができました。医師として働く傍らイタリア語を勉強(イタリア語もスペルと発音が一致している言語です)し、イタリアの小児病院で2年間働きました。イタリアの友人たちから「一つのまとまった文を喋るときの区切りや抑揚や情感がイタリア人のイタリア語に近いね」と褒められました。
子どもに絵本を読み聞かせていると、自分の音読が特殊で、いま読んでいる箇所の1行くらい先を目で追いながら(1行後を)読んでいることに気が付きました。英語を聴いたり喋ったりはさっぱりですが、英文校正の指導を受けながら英語の医学論文を4つ書きました。今でも本を速く読むことは苦手ですが、そこまで困っていないようです。