ジーンズ

ヴェネツィア(Venezia), ヴェネト州

私は白衣の下は普段着で診察をします。きちんと清潔でありながらもことさら権威を演出するようなことなく、子どもも家族も明るさや親しみやすさを感じる服装(医師も個性や好みを自由に表現しているようだから自分たちもここではリラックスしていていいのだと感じてくれる服装)がいいと思っています。

下はジーンズを履くことが多く、子どもの口の中や耳の中を覗くためにしゃがんだりかがんだりが楽にできます。あまり知られていませんがジーンズは私の留学していた小児病院のあるジェノヴァの街が発症です。それだからという訳ではありませんが、小児病院で研修医は男性も女性も白衣の下は大抵ジーンズを履いていました。髭(男性)、強めの化粧(女性)、ピアス(男性・女性)も研修医は普通にしていました。それらがイタリア社会全体としてみて決して特別なことではないということもありますし、名前も実力もある小児病院の研修医で、当たり前に「やるべきことはやる」のを誰もが知っていましたし、「やるべきことをやる」のであればその人自身が心地よいと感じながらのほうがいい仕事ができる(私もそうだから相手もそうだろう)という共通認識があるのだと思います。

私が学生・研修医として学んだ大学病院の小児科でも、当時の私にとって雲の上の存在であった先輩医師たちが、ジーンズを履いたり(男性で)長髪を後ろで束ねたりといった自由ないで立ちで颯爽と仕事をされていました。それは大学病院という組織の中では随分と異質だったかもしれませんが、それらの先輩たちは(決して贔屓目ではなく)際立って優秀で格好よく、子どもからも家族からも慕われ、誰もが認める存在でした。服装は身につけるその人がどんな表情や声の人で、どのような体格で、どのように動く人か、ここで言えばどんな診察をする医師か、によってふさわしいものが違ってくるのだと思います。

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